祈りが言葉に変わる頃 ページ35
-
"俺の彼女になりたい？"
昨日ユンギに言われたこの言葉がずっと私の頭から離れない。あのようにストレートに聞かれたのは初めてのことで、私は動揺から咄嗟に"分からない"と口走ってしまった。それなのにどうして私が想像する未来にはいつだって隣にユンギがいるの？そんなのとっくに答えは分かってる。今までもこれからも彼以外の正しさや間違いが何へ導いても、どうせ心は上手くやれないと知っているから。
ユンギが私の隣にいて無条件に愛情を注いでくれる、そんな日々にずっと甘えてきた。彼の気持ちに気付かないフリをして、そして"ユンギの一番でありたい"と徐々に膨れ上がる自分の想いにも蓋をして。"ユンギの彼女になる"、今思えばそれは私が一番望んできたことなのかもしれない。
でも現実はそんな簡単じゃなくて。
今や世界のBTSと言われるまでになり、armyと声を上げる人達も今まで以上に増えた。それでもまだ人気になればなるほど厳しい意見や批判の声もあるのが現状。それに日々立ち向かっている私たちに、例えば"メンバー内での恋愛"などと浮ついた話は許されるのだろうか。
その先を想像して、考えてしまって怖気付いてしまう。どうせ世間に晒されて傷付けられて、壊されるくらいなら今のままでいい、と。だけど同時に、不意に芽生える嫉妬や焦りという矛盾した醜い感情に押し潰されそうになる。この負のループから私は中々抜け出せない。
「Aさん！終わりましたよ〜」
心ここに在らずだった私の意識は、ボーっとしてましたね、と笑うメイクさんの声で浮上した。
『わ、有難うございます！‥すごい、綺麗なメイクですね。』
「それはAさんが素敵だからですよ。腕の振るい甲斐があります。」
「、それとあの‥いつもすみませんでした！仕事に私情を持ち出したりして‥。今日改めてお二人を見て‥私はAさんといる時のユンギさんが好きなんだ、って気付いたんです。」
どこか吹っ切れたように笑う彼女に私は返す言葉が見つからない。そして私を見兼ねた彼女は「そんな顔しないで下さい、ずっと応援してますから。」と鏡越しにまた優しく微笑むから、私は立ち上がり頭を下げることしか出来なかった。
こうして人の優しさに甘えて、いつまでも自分の感情に嘘をついて、中途半端な態度ばかり取っていては周りの人を傷つけてしまうだけだ。
全部終わったら、ちゃんと伝えよう。私はユンギが好きで、ユンギの彼女になりたいんだよってこと。
-
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1727人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「BTS」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：mitsu | 作成日時：2021年7月19日 23時
